2015年6月9日火曜日

ジャクソン(通称クロ)、逝去

「この世を去る」という聞き慣れた言葉も、現実を目の当たりにするとツラいものがあります。
今朝、うちの番犬が十年程生きた末に逝きました。

ウィルス性の肺疾患だったようで、呼吸の仕方がおかしくなっていました。
先月あたりから急激に体力が低下し、散歩のスピードが落ちました。
先々週は散歩の途中で座り込んで動けなくなり、初めて抱っこをしてあげました。
先週は散歩をしても家の敷地内で動けなくなりました。

犬小屋にも入らず、何も食べなくなり、痩せて、毎日大量の目ヤニを出して地面に伏していました。
それでも私が近付いていくと、尻尾を一振りして、身体を起こしました。
ただただ頭を撫でるしかありませんでした。

一昨日は犬小屋の周囲の林にカラスが群がり、彼の身体には大きな蠅が何匹も止まっていました。
カラスの鳴き声と蠅の飛ぶ音、とても嫌な音が響いていました。
それでも彼は粗い呼吸をして生きていました。

昨夜、寝ようとしたら彼のかすかな鳴き声を聞きました。
明け方から雨が降り始めました。
早朝、布団の中で何度か彼の鳴き声を聞きました。
私はこのとき寝ぼけながら「今日は雨で涼しくなったからちょっと元気になったのかな」と思いました。

布団から出て、犬小屋の方へ行きました。
彼は小屋に行儀良く入っていて、入り口から前足と頭を覗かせ、雨を眺めているように見えました。
彼はもう呼吸をしていませんでした。
目を少し開いたまま、口からちょっとだけベロを垂らしていました。

「ごめんなぁ」

彼の頭を撫でながらそんな言葉が漏れました。
死ぬのが怖かったのか、最後のお別れのメッセージだったのか、昨夜から今朝にかけての彼の鳴き声に応えてあげることができませんでした。
彼の命を看取ることができませんでした。

雨のせいか、彼の周りにはカラスも蠅もおらず、とても静かな風景でした。


我が家は代々犬を外で飼育し、お手すらできないのがほとんどですが、もれなく番犬に育ちます。
他人が来ると噛み付かんとばかりによく吠えます。
彼は少し生意気なところがって、じゃれていると腕や服の裾に咬みついて引っぱり合いを仕掛けてきます。
たまに家族にも吠えてしまい、間違いに気付くと行儀良く座り直してごまかします。
走るのが好きだったので、散歩というよりも散走になります。


家の敷地の高台、犬小屋を見下ろせる場所に穴を掘りました。
犬小屋から彼を引っ張り出そうとすると、身体がすっかり固くなっていました。
首輪と鎖を外して、高台まで運びました。

土を手で揉みながら彼の亡骸にかけていくと、途端に涙が溢れてきました。
少しずつ、彼が見えなくなっていきました。

日照り続きで久しぶりの恵みの雨。
そんな有り難い日に彼とお別れでした。

畑で種を土に埋めるように、彼を土に埋めました。
また違うかたちで逢えますように_拝


2009年7月 散歩にて